(メディア掲載)【川崎大輔がみるアセアンアフターマーケット】ベトナムで中古車ビジネス、初の日系企業
2017年12月25日発行の、業界最大誌「整備戦略」(日刊自動車新聞社発行)に掲載されました。ベトナムの中古車・整備市場について現地の情報を書かせて頂きました。
◆急拡大するベトナム自動車市場
クラクションで街が目覚める。朝の通勤ラッシュ時には自動車と無数のバイクが道を埋め尽くす。ベトナムの魅力は約9,000万人の巨大な人口であり、中間・富裕層の拡大によって消費市場の成長が大きく見込める点だ。
2000年には年間新車販売台数が1 万台程度であったベトナムだが、2013 年以降は年率平均 35%の急速な成長を見せ、最近は自動車が飛ぶように売れている。ベトナム自動車工業会(VAMA)によると、2016年通年の新車販売台数は30万4,427台。これから急速に自動車保有台数が拡大し一気にモータリゼーション期に突入する可能性が大きい。
ベトナムの中古車市場も拡大してきている。新車販売台数の急増、また1~5年の使用で売却される車が増え、多くの中古車が市場に出てきた。流通量が増え中古車の販売価格も割安になっている。国民の所得水準が向上し中古車を購入できる層が増え、ベトナム中古車市場が活況を呈している。
◆日系初のベトナム中古車ディーラー
ベトナム(ホーチミン)で日系初の中古車ディーラー”Auto Avenue Tokyo”。2017年7月のグランドオープンからの状況についてAuto Avenue Tokyoの伊藤宏治社長に話を伺った。
Auto Avenue Tokyoは、規制の厳しいベトナムで、中古車販売ライセンスを取得した初の日系企業となった。日本で中古車販売や、メンテナンス業を展開する株式会社オートアベニュー(東京本社)のベトナム現地法人として、2017年7月にグランドオープン。フェイスブックでの告知を開始したところ約3か月で2万近くの「いいね!」が集まった。伊藤社長は「短期間でこんなに、いいね!が集まるとは思っていなかった。ベトナム人も自動車に関心を持ってきたということですね」と指摘する。
オープン当初、洗車キャンペーンを行った。1回70万ドン(約350円)で日本式の洗車ができるということでフェイスブックやクチコミで噂が広がった。今では、車両点検やオイル交換なども含め毎日10名くらいのお客様が来るようになってきている。「1度来店してくれたお客様の多くは、リピーターになる。今後は鈑金(ばんきん)や塗装、車の代替販売などへしっかりとつなげていきたい」(伊藤社長)。
◆ベトナム中古車ビジネスにおける課題と魅力
ベトナムにおける課題は、法整備が整っておらず中古車業界の信頼が低いことだ。「中古車ディーラーは、走行距離、グレードなどもごまかします。事故車も多いです。ベトナムで買う中古のものほど信頼できないものはありませんからね。」(ベトナムの男性会社員)。まさに日本の30年ほど前の状況がベトナムだ。情報量が少ない購入者が弱い立場となる。逆にいえば、お客様にしっかりと情報を開示して誠実にお客様と向かい合う日本スタイルを確立する余地が多く残っている。
伊藤社長はベトナムでの魅力は「大きな市場がありながらまだ自動車が末端にまで広がっていない。中古車販売ライセンス取得は大変であったが、入り込んだら手付かずのブルーオーシャン」と指摘する。
日本も似たようなグレーな時代があったが、課題を解決し変化してきた。ベトナムの中古車市場に同様の変化をたどっていくと考えれば、日系企業は将来を見通せる優位な立ち位置にいる。課題解決の経験とともに、新たな市場に果敢にチャレンジしていくことが新しい成長につながる。